コラム
パソコンに向かって仕事をしていると、なんだか同じ空間にいる同僚とも別の世界で別の景色を見ているような感覚になります。「インターネットは世界とつながっている」なんていいますが、同じオフィスにいる人とはつながっていないような、なんだか不思議な世界です。一方、取材に出かけて色々な方と対面でお話しするお仕事のときは、よく知った世界にもどってくるような感覚になります。
…と、普段の取材はそうなのですが、今回の訪問先は「鍼灸治療院」ということで、なんとも別の不思議な世界へ飛び込んでいくようです。
まず、鍼灸は”しんきゅう”と読みます。「鍼」ははり、「灸」はそのものお灸のことだそうです。はりやお灸の資格を持った先生が、カラダのつらいところを和らげてくれるところが「鍼灸治療院」です。
鍼灸の世界を知らない私からすると、鍼灸の世界で生きている先生がそもそも謎です。
稲毛海岸店の若梅先生に鍼灸の道を志したきっかけについてきいてみました。先生が先生になったきっかけは「おばあちゃんが肩もみをすると喜んでくれたから」だそうです。なるほど。そう聞くと先生も少し近くに感じます。
ところで、はりとお灸にどの様な印象をお持ちですか?よく「はりはそれほど痛くないですよ」「お灸は熱くないですよ」と聞きますが、体感してみないことには不安はぬぐえません。
「ここからは初診の人として対応してください」とお願いしてリアルに体験させてもらいました。
まず施術の前に私も色々質問されました。普段の不摂生を告白するのは少し照れくさいですが、体の不調の原因を一緒に探ってくれるので、お話ししているだけで気持ちはスッキリしてきます。また、失礼ながら鍼灸への不安も伝えると「はりもお灸も使わない施術もありますよ」とのこと。「えー、鍼灸治療院なのに?」一瞬こころゆらぎましたが、そこはリポーターとしてはりとお灸をリクエストしました。
あくまで私の感覚ですが、はりはささっているのを「感じる」ものの「痛い」の2歩手前です。ただ、最初は恐怖感が手伝って痛いのだか痛くないのだかよく分かりませんでした。中には実際にさわる前に「痛い痛い」と言う方もいらっしゃるそうです。お灸は感覚だけでは何をされているのか分からなかったので、あえて少し姿勢を変えて見させてもらいました。米粒くらいのお灸を素早く扱う器用さは驚愕です。
効果についていちばんお伝えしなければならないのですが、それが非常に困難です。なんとなく鍼灸は「じわじわと効果が出るもの」とイメージしていました。ですがたった1回で、パソコン業務で蓄積した肩から背中にかけての固まりのようなものが無くなってしまいました(体験者の個人の感想です!)。
自分の言葉で正しく伝えようとすればするほど「盛ってる」と疑われそうなので、隣にいた井上先生のコメントをのせます。「またまたー、言い過ぎじゃない?」「ほんとに?」
個人差があるのだとは思いますが、私の場合は選んでくれた施術との相性が良かったのだと思います、リポーターとして信用されないほど効果を実感してしまいました。
今回が鍼灸初体験でしたが、最初のお話で私を理解してくれて、相性ぴったりの施術をしてくださいました。施術後には親身になってこれからの鍼灸との付き合い方の相談にものってくれました。
正直なところ「相性がある」ものには「合わなかった時の不安」があるものです。ですが、稲毛海岸店には8名(2018年7月現在)もの、年齢も性別も専門分野も様々な先生がいて、カラダの状態やリクエストにあった施術を提供して下さるとのことで安心です。
帰り際に先生に心にしみる言葉をいただきました。「鍼灸は自分自身の治癒能力を高めるものですからね」。そういえば、自分のカラダのことなのに他人任せに考えていたかもしれません。「カラダを壊したら誰かに治してもらう」のではなく、疲れを溜めない生活サイクルを心がけよう、どうしても固まってしまったらまたココに来よう、そんな風に思いました。
週末は家に閉じこもることが多かったのですが先生に背中を押され、カラダもココロもリフレッシュしようと思いました。まずは、忙しさのあまり諦めかけていたエッシャー展に出かけてきました。上野の森美術館で開催されている「ミラクル エッシャー展(※)」は、初期の作品や直筆のドローイングなど貴重な作品が数多く展示され、エッシャーの世界を知る素晴らしい機会となりました。謎の芸術家(版画家)エッシャーが近くに感じられます。
訪れなければこの世界を知ることができなかったのかと思うと、なんと危うき分岐点に立っていたのだろうと思います。「諦め」の方向を向いていた自分が、今の自分から見るとありえません。なんだかフシギですね。
地元に根付いて開業20年の老舗「鍼灸治療院稲毛海岸」のページはこちら
※「生誕120年 イスラエル博物館所蔵 ミラクル エッシャー展 奇想版画家の謎を解く8つの鍵」は上野の森美術館で2018年6月6日から7月29日まで開催しています。詳しくはオフィシャルWebサイトをご覧ください。本記事制作にあたりご対応いただきました広報事務局のご担当者様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました。